このところ睡眠時間が短くなってきたような気がする。去年過眠の傾向があったのはやはり鬱のせいかなあ、とも思うけれど、薬が変わって睡眠の質も変わってきたかなあ、とも思ったり。
うん、でも夕べは一生懸命に読書していたら、それで眠りが短くなったのもあるかなあ、と。面白かったのですわ♪
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「前田慶次郎異聞ーりんと小吉の物語ー」泊瀬光延
この前、「阿修羅に恋して」を書いた時の検索にひっかかって、偶然ラッキーに出会った本。興福寺の阿修羅像のイメージから生まれたキャラクターが主人公の物語。
舞台は戦国時代。豊臣秀吉の天下の時代。なので伏見から物語が始まる。
前田慶次郎の家臣、小吉は主人の命を狙った刺客に恋をしてしまう。その刺客は並ならぬ剣の腕を持った阿修羅像のような美貌の少年。彼にこころ惹かれるあまり、小吉は主人を裏切る決心をしてしまう。
…というところから始まるのだが、このあとの展開がいろいろと予期せぬところに拡がって、一瞬たりとも眼が離せないようになってしまった。
阿修羅の美貌の持ち主、りん、と呼ばれる少年は、姿形は男ではあるけれど、女の心を持ち、愛を渇望する存在でもある。常に死と隣り合わせの日常の中で、心を通いあわせたりんと小吉は生涯変わらぬ伴侶の契りを結ぶ。
けれども戦の世の中、つかのまの別れが永遠の別れになっても不思議ではない時代。次々にりんを襲う危難。
本当にどきどきはらはら、という展開。
りんと小吉ばかりではなく、登場する多くの人物がとても魅力的。特に前田慶次郎という人物は自由闊達、かつ度量の拾い心を持ち、武勇に優れるばかりではなく、風雅をも愛する、幅広い魅力を持つ。その存在感はすごい。いままで戦国時代には詳しくなかった私でも、もっともっとこの人物を知りたい、と思ってしまった。
慶次郎ばかりではなく、その他にも多様な身分の多くのキャラクターが登場するが、それが皆いきいきとしていて印象的。
展開の面白さとキャラクター達の魅力に惹かれて、456P、一気に読んでしまった。時代小説であると共にやはり愛の物語でもあると思う。
戦場ではまさしく戦いの神、阿修羅の働きをするりんが、小吉の前ではひとりの恋する少女(いや、外見は少年なんだけど)になってしまう。両性具有の存在をこういう形で描いたキャラクターがとても新鮮、かつ魅力的。
死と常に隣り合わせにある、刹那の生の瞬間が煌めく。
かつての日本にはこういう美意識の世界があったんだよねえ。
456P、読み終えてもまだ物語は終わらない。続編がとても楽しみに待たれる。
これがおそらくは処女作、というので、感嘆してしまった。いや、人生に楽しみがひとつ増えたことが嬉しいかぎり。