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両親の介護も一段落 双極性2型障害と気長に共生中

「火怨  北の燿星アテルイ」

今、気付いたんですが、昨日あたりからあのどうしようもなくコントロールしづらかった理不尽な「イライラ感」が消えている!

死神に耳元で囁かれている時のように切実に悩んでいたんですが、それが消えたというのは大変にありがたいです。

これで全然無関係な人や家族に八つ当たりする心配もなくなりそうです。ありがたいわ〜 (^_^;)

あれがうつの症状なのか、躁の症状なのかわかりませんが、いずれにしても自分でコントロールが出来ない気分障害っていうのはきついです。落ち込みます。

…でも、治まったから、またしばらく様子を見ても大丈夫かな。次の受診は9月初めなので、その時に薬の相談をするかな、と思っています。

 私の使っているKindleには現在40冊前後の本が入っているのですが、ふと気が付いたらフィクションの分野で一番多く入っていたのが高橋克彦さんの作品でした。高橋さんの文章は読みやすく、歴史物からホラー、ミステリーからSF、と多岐に渡っているのでいろいろな楽しみ方が出来るのですね (^_^;)

そんなわけで昨夜読み終えたのがこの本。

「火怨  北の燿星アテルイ

文庫のリンクを張りました。なんでも今年早くにドラマ化されたみたいですが、どのみちうちの環境では見れないのと、これだけの内容では大胆かつ繊細に映像化は無理だろうな、と思ったりします。

この作品の設定では東北の蝦夷たちは、もともとは出雲の地を天つ神に追われたオオクニヌシ(国つ神)の子孫という設定になっています。だからもともとから日本に暮らしていて、渡来系の血族に追われた人たちかなあ、と推測。のちの時代のアイヌの人たちと直接関係があるという記述はありませんでしたが、北東北のあたりにはアイヌ語の地名も多く、実際にアイヌの人たちも生活しているらしいので、どこかで接点はあっただろうな、と勝手に想像 (^_^;)

静かに穏やかに暮らしていた蝦夷の人々を朝廷の軍が攻めてくるんですよね。蝦夷の人たちが悪いわけでもなんでもありません。ちょうどその時、大仏建立の最中で、蝦夷の土地には黄金が出る、と判明したから。本来御仏の建立なのに、時の権力者たちの思惑や物欲や権力欲などが絡んでいくんだな〜。

それでもそういう朝廷に従属するのは否、として蝦夷の人々は迎え撃つ決意をします。何十年かかるともわからない戦を、限りある兵力を埋める知力と技と結束によって。

最後の方などは朝廷の威信を示すためだけの戦になっていきます。いや、もう、全体的な印象として、「まつろわぬものたち」を勝手に支配下に置こうとする行為で、それで朝廷の権威を民に見せつける、なんて大迷惑で、正義もなにもあったもんじゃない (-_-メ)

どうせ見ることが出来ない敵なんだから、ということで蝦夷の人たちを「人」とも見ていない。特に都の権力者たちは「獣」だと思わせておかないと民の心が集まらないとしています。

そんな中で坂上田村麻呂だけは、アテルイを初めとする蝦夷の人々に偏見を持たず、対等の人間同士、武人同士として敬意を持って接します。敵同士ですが、実は強い信頼関係が生まれているというあたり…。

なんだかもう、そういう仲間たちとの絆とか、誠意とか礼儀とか、ものすごく熱くて強くて感動します。

いつも思う。フィクションっていうとすごく荒唐無稽だと受け取られがちではありますが、実はどの物語にもその内容を反映した現実の雛形が必ず存在するんですよね。

小野不由美さんの「不緒の鳥」を読んだ時もそう思いましたが、本当に物語の舞台の雛形はすぐそばに現実として存在するじゃないか、と。SFでさえもフラクタルな世界ですから、気付く人は気付くんだろうな、と思いました。

まあ、そういうふうに描かれているといえばそれまでかもしれませんが、アテルイなどは非常に貴い魂の持ち主だと思いました。人間としてどんどん大きく強くなっていくのがよくわかります。朝廷側の人間で彼に対等に接することが可能な度量を供えてるのは田村麻呂だけだもんなあ。蝦夷の登場人物は総じて大変魅力的です。

「まつろわぬもの」をかくも見事に描かれてしまうと、なんだかもう、権力体制に呑まれていくばかばかしさが余計にわかってしまう (^_^;) 広々と拡がる天地のもとで、魂の自由をなによりも大切に生きた、誇りある人々の物語でした。星五つね。★★★★★

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