せめてSNSには載せないで、そっとしておいて
お葬式がらみの話題の続きです。
あれからあちこちのサイトを検索してみたら、多くはないにしろ、故人のご遺体の写真を撮りたい、という人もいらして、そういう場合は、ご遺体が納棺師さんの手で本当に綺麗なお姿になっていたので、残したいと思った、と、ご家族のそういう心境は理解出来るかも、と思いました。
ただ、自分でそっと大切に持っているのはいいとしても、やっぱりSNSには載せない方がいいと思うよ。いや、のせちゃういかんと思う。
私くらいの世代ですと、いまほど「写真に撮られる」ことに慣れていない気がします。だって自撮りとかなかった時代に育ってますしね。フィルムカメラで撮った写真は現像してそっとアルバムに貼るくらいで、どうかすると現像もしないでフィルムのままで忘れられてたりして… (^_^;)
故人を綺麗にしてくださるお仕事
納棺師というお仕事があります。映画「おくりびと」で有名になりましたが、私は原作の方で読みました。
この原作と映画をきっかけにこのお仕事が広く知られるようになって、「死にまつわる仕事」への偏見が変わったのはとてもいいことだと思っています。
私の母もやつれてはいましたが、納棺師さんの手によって、すっかり綺麗な状態にしていただきました。
母の場合、友引の斎場のお休みをはさんだので、普通よりも一日長く安置してもらっていたんですが、点滴の後始末がちゃんと出来ていなかったみたいで、手の甲から流れた血液で布団が血だらけになったり、体液が染み出したりしていましたが、ちゃんと処置して綺麗に服を着せてメイクして、切断されていた片足も私が渡した黒いハイソックスでわからないようにしていただきました。
そういう場所にいると、本当にこれは尊いお仕事だと頭が自然に下がります。
これも尊い仕事です
「おもかげ復元師」という本があります。これはいわた書店さんの1万円選書に当選して、岩田店長さんが送ってくださった中の1冊だったんですね。
もっとも忘れられない1冊になりました。
納棺師さんの中でも、著者の方はお顔を重点的にケアされています。
それというのも、この本の中で触れられているのは東日本大震災で犠牲になられた方々だからですね。
津波に呑まれて見つかるまでに何日もかかったご遺体もあります。口の中に砂がいっぱい詰まっていたり、傷ついていたり。そういう方々に向かって語りかけながら綺麗に整えていく仕事をボランティアでされている記録です。
残されたご家族はあまりにも突然で、かつ悲惨な死に方をした大事な人の運命をなかなか受け入れることが出来ません。すっかり面変わりしてしまったショックなどもとても大きいからです。
そういうご遺体をなるべく生前の姿に近く戻してあげることで、ご遺族は語りかける勇気を持たれます。そしてわずかずつ、その悲劇の死を受け止める心構えに変化されていくわけですね。
ご遺体を綺麗にすることで、ご遺族のグリーフケアをしている、という事実にひどく心を打たれました。そしてなんと尊いお仕事だろう、と感動した次第です。
逝ってしまった人たち 遺された人たち
東日本大震災はあまりにも多くの死者を残しました。
亡くなった人の何倍かの人数で「遺された人たち」が存在するわけで、そういう人たちと対峙した方々の記録の中にこういう本もあります。
これは津波被害の直後からの現場のルポルタージュ。体育館にずらっと安置されたご遺体に語りける人々。家族を探す人、…もう、なんというか、亡くなられた方々と遺された方々の関わりがなんというべきか、言葉を失います。
けれども実は生と死はこんなに近くになって、たまたま助かった人と、助からなかった人とは本当にとても近い距離で、遺された人はまた悲しみと向き合わざるを得ません。
ここでもまたグリーフケアの重要性を認識させられます。
グリーフ‐ケア(grief care)
《グリーフ(grief)は、深い悲しみの意》身近な人と死別して悲嘆に暮れる人が、その悲しみから立ち直れるようそばにいて支援すること。一方的に励ますのではなく、相手に寄り添う姿勢が大切といわれる。悲嘆ケア。
(コトバンク)
私は震災後、この亡くなった方々と遺された人々のあいだについて、どうしても深い関心を持たざるを得ませんでした。
金菱教授と東北学院大学のレポートもずっと追いかけてきました。
私の夢まで、会いに来てくれた ?? 3.11 亡き人とのそれから
- 作者: 金菱清(ゼミナール)
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自分自身が癒されたかったのかもしれません。他の人の気持ちをケアしたいというのももちろんありました。グリーフケアにはずっと関心があります。
生と死は本当はとても近い。「メメントモリ」というのはどうやら私自身のテーマであるような気がします。
死者を思うとやはり自然に頭が下がります。その人が懸命に生きてこられた人生の重さと尊さに。
だからお願いです。なるべくそっとしておいてあげてください。