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両親の介護も一段落 双極性2型障害と気長に共生中

いまも消えぬ貧困の苦界

 おすすめ本を送っていただいたので、早速一読。寝ながらでも読書は出来るからありがたい。ただ、左腕の痛みのおかげで、その姿勢に影響を受けるのはどうしようもないんだけど… (ーー;) 夜中に肩から腕の重だるさでしばしば眼が覚める。五十肩だとしても相当不自由だし、きついなあ、と思いつつ…。

どうも私は文庫だとほぼ一気読みになる傾向があるのかもしれないなあ。

 明治から太平洋戦争終結に至るまでの時代、現在の東京都下に数多く存在していたスラム街に暮らす人たちや、貧しさのために娼館に売られた女性たち、同様に女工として働いていた若い女性たちの悲惨で壮絶なルポ、とでもいうべきか。

「東京の下層社会」

蚤虱、南京虫が数多いる長屋で、わずかな日銭を稼いで、それでも残飯を奪い合う人たち。病を得ながら必死で借金を返済するために身を売る女性たち。理不尽な虐待と人間扱いすらされない劣悪な状況で働く少女たち…。

開国以来、日本は諸外国に追いつき、追い越せと懸命だったのだろうけど、福祉政策というのはまったく手付かずだった。貧困にあえぐ人たちは数多く首都の間近にいたのに、もっともショックだったのは、そういう人たちに対して、ごく普通の市民の視線がまったくと言ってもいいほど向けられていなかったこと。そんなものは存在しないかのように黙殺されたというか、関わりを持たないことが良識とされたのなら、これは怖いことだと思う。

はるか昔、中学生の時に「カムイ伝」を読んで、江戸時代の下層社会について(フィクションではあるけれど)少なからぬ衝撃と共に得た知識と、もしかしたら状況はほとんど変わっていないかもしれない。

大戦後、やっといくばくかの福祉面の制度が形を整えてきたように思われる。

それなのに現在に至っても「普通の人々」の視点がまるで基本的に変化していないことに愕然とする。「貧困は本人のせい」として、まず弱者から切り捨てていこうとする政策に同意する人々が少なくないのは恐ろしい。

なにゆえに自分に無関係としてそこまで酷薄になれるんだろうか??単に想像力と共感力が貧しいからかな?きっとそれだけではフォローしきれないものもあると思うけど。

今、大戦以前の日本に戻りつつあろうとしていることに気付いている人ってどれくらいいるのかな?そのことに対して危機感を持つ人がどれだけいることか。

地震などの災害が遠くない将来に予知されているけど、そういうことで生活の基盤を失ったとしても、この国の体勢も社会もきっと救いの手を差し伸べてはくれないと思う。福島がこれなんだから。

精神面が成長しないとどうしようもないことというのがあって、その顕著なもののひとつがこの貧しい人たちへの視点として現れるのかもしれない。日本のみならず、世界のあちこちで同様の苦しみに晒されている人たちが大勢いる。そういう人々が平安を得られるようにならない限り、地球上に本当の平和というものも顕現しないのかもしれない。

いまはまだ、多くの苦界の棲息を許す闇夜の中にいる。その闇に僅かずつでも灯を灯していくためにいくためにはどうすればいいか?  …個人の出来る範囲を越えたところでも考えずにはいられない。

たとえ個人の願いでも、多くの願いが集まれば、ささやかに火種になるかもしれない。わずかな明かりになるかもしれない。

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