2晩で読んだ。映画「おくりびと」の原作とされている本である。
私は映画を見ていないし、それと比較は出来ない。内容を要約するような器用なことも出来ない。それをすると本当の良さが伝わらなくなってしまうと思うので、本当に感じたことのみ書いておきたい。
読みながら「これでいいんだ。これでいいんだ」という気持ちになったのが不思議な気がするが…。それは現在の自分に対する肯定でもあり、著者への共感でもあり、真理に至る道程への標でもあると思う。
著者の青木さんはあくまでも実体験の直感的な理解から、さらに思索を深めている人だから、その理解の度合いが単に「頭だけで理解した」というレベルとは全然違うんだよね。詩人の直感が思索を深めることによって、さらに真理に至る。
そういうものだから、私もあらゆる人生に多分「失敗」というものはないんだろうな、と思った。この世での社会的な成功とか、そういうこともたいした重要なものではないと思えるし。
自分がその生の中で経験するすべてのことに意味があると思える。現在の介護の経験も父が身を持って与えてくれている貴重なものだと思えた。これが父から受け取る最大の財産になるかもしれない、と思う。
どれだけ悩んでもいいのだと思える。それも多分意義のあること。「悩む力」で「悩む力がある人は生きるエネルギーが強い」というようなことを読んだけど、それもそうだよなあ、と。
あらゆる出来事に心が揺れていいんだと思う。それも人ゆえに。心が揺らがなくなれば、きっとそれが神仏の境地に近いものになるんだろうな。
「光」そのものの神仏のような存在。その一部であるこの世のすべてのいのち。そういうもののすべてが愛おしくて涙が出る。
今はそれなりに納得していても、また心は頻繁に揺れるんだろうけど、それも貴重な意味あること、と思うと、もっと生きていこうと思えてくる。もっと経験したいと思う。この世で出会ういろんなことを。
私の文章ではとても書き尽くせない内容の本だし、これは関心がある人には是非とも自分で読んでいただきたいと思った。その人それぞれに理解度も違ってくるし、共感を持つ部分も違ってくるとは思うけれども。
私には出会えて良かった、という本だった。多分、この先も幾度も読み返すだろうな。そういう一冊であることは間違いない。