筆文字アートの入門書をぱらぱら眺めていたら、あることに気がついた。
うちの家族の間で一番多く使われた言葉が「ありがとう」ではないかということに。
おばあちゃんなんかは昔の人なので、「ありがとう」じゃなくて
「おおきに、はばかりさん」だったけど。
うちの家族はとにかくすぐにお礼を言う人たちでした。
「ちょっとそのおしょうゆ取って」
「はい」
「ありがとう」
「これ片付けといてくれるか?」
「はいはい」
「おおきに」
「あれ買うといたよ」
「おおきに。ありがとう」
などなど、なにかごくささやかなことでもしてもらったら
「ありがとう」なり「おおきに」なりが飛び交う家庭だったみたい。
まあ、それなので、親子でも夫婦でもまず険悪にはならない。
毎日何回「ありがとう」が口から出ていたやら、考えたらわからないけど、
とにかく多かったねえ。でも「ありがとう」の言霊は悪い作用をもたらさないので
それでよけいに家の居心地がよかったのかもしれない。
なにか試しに書いてみようとか、口に出してみようとか、そういう時に真っ先に
「ありがとう」が浮かぶのも名残かもしれない。
それでもこのごろ考える。私みたいにごく普通の、むしろマイナス面も多く持っている
人間が、それでも一人でも生きていけると思えるのは、実にとても多くの人の有形無形のヘルプやらサポートやらフォローやらに支えられているおかげかもしれない。
顔が見える友人知人はもちろんだけど、直接には関わりがないところで、
やっぱり支えてくれている人がたくさんいるはずで、そういう人たちに感謝しないと
嘘だよなあ、と思えてくる。
もしかしたら知らない町のどこかで名前も知らない人が、単に仕事だし、と
思いつつやってくれていることに過ぎないかもしれないけれど、
実はそれがあなたの知らないどこか遠くで、誰かの支えになっているかもしれない。
…そういうことを想像すると、いつのまにか自然に「ありがとう」という
気持ちになるし、それを言いたい相手が家族だけではないことがとても嬉しい。
そして、逆に私自身もどこかの誰かのささやかな支えになれたらいいなあ、と
改めて思うのだ。
個人的には「ありがとう」は「愛してる」よりも好きな言葉です (^_^)